それは、必要なサービスを提供しているのにお金が取れないからです。
こんにちは、佐久間(@kaigo_webwriter)です!
現在も含めて介護業界で10年以上働いています。
それでは早速ですが、本題に入りたいと思います。
必要なサービスを提供しているのにお金が取れない
まずは結論部分から解説していきます。
ちなみにここでの介護ビジネスとは「介護保険内サービス」の事を指しています。
例えば、
- デイサービス
- グループホーム
- 訪問介護
などの事です。
今回はデイサービスを例に解説していきますね。
さて、「必要なサービスを提供しているのにお金が取れない」と言いましたが、
大枠で言えばそんな事はありません。
デイサービスでは、国が用意している加算(入浴や個別機能訓練加算など)のサービスを提供すれば、プラスの収益が発生します。
しかし、言ってしまえばお金が取れるサービスはここまで。
加算以外のサービスを提供しても(必要性の有無に関わらず)加算以外であれば請求する事が出来ません。
例えば、「体重が重い方」の介助に入るシーン。
場合によっては2人介助、時には3人で介助しなければならないケースというのがあります。
しかし、この方を何人かけて(莫大な人件費を投入して)介助しようが取れるのはその方1人分の料金です。
もちろん、機械を導入しても人件費が機械の導入費になるだけなのでかかる経費としては一緒です。
もう一つ例を出すと、「要望が多い方」の対応。
この要望の全てに誠心誠意対応したとしても、発生するのは通常の料金になるので、これらのサービスはある種無料で提供する事が求められます。
これが介護ビジネスが儲からない理由に対しての結論です。
もうピンと来ている方はいるかも知れませんが、経営目線で考えれば「出来るだけ手のかからない方」に来て頂いて人件費や設備などの経費を抑えるというやり方が正解になってきてしまうんですよね…
利用者を選ぶ事は出来ないから
という事です。
これは制度上の話ではなく、デイサービスで言えば「手のかからない方」だけで稼働率を保つなど到底厳しい話なんです…
なせなら、デイサービスの数はかなり多くなっています。
確かに高齢化によって需要も増えていますが、地域によってはそれ以上にデイサービスが多いです。
分かりやすく言えば利用者の取り合い状態です。
先程述べさせて頂いた、「出来るだけ手のかからない方」に来て頂いて人件費や設備などの経費を抑えるというやり方が正解。というのは、
前提として「稼働率(定員に対しての利用者の数)」がMAXの状態を保っている必要があります。
そして、今日の競合が溢れかえるデイサービス市場で、この稼働率を上げるのは苦戦を強いられます。
その中で「欲しい利用者」だけを選んでいる余裕なんてないです。
つまり、「大変な方」の対応も必須となり、その中で「お金が取れない必要なサービス≒売上にならない経費」が発生してきます。
念のため補足しますが「俺の営業力があれば利用者を選びつつ稼働率MAXに出来る!」というスーパー有能な社員がいたとしても、その選んだ利用者もいつお金が取れないサービスが必要になるかは分からないと思います。
加齢等の影響で筋力が低下するとかは防ぎようのない事ですからね…
なんとなく介護ビジネスが儲からない理由について見えてきましたでしょうか。
サービスを作れない、価格を自由に決められない
これまで解説した事を簡潔にまとめると、
- 加算以外のサービスは直接的な収益にはならない
- その“無料サービス”が必要なシーンは多々ある
- 無料サービスが無くては稼働率が上がらないので“しない判断”は出来ない
- それによって“原価割れ”が起こり得る
という感じで、
例えば売上が同じAとBの事業所があったとしても、経費は利用者によって変わってきたりします(先程の3人介助が必要な方のように)。
もちろん、同じA事業所でもその時期の利用者によって経費は大きく変動する事だってあります。
実際に僕がデイサービスの施設長をしていた際も、当月はそれなりの利益が出ていたが、次月一気に落ち込んだという事が少なからずありました。
この「経費が安定しない」問題をどうにかしない限り、介護ビジネスで利益を安定的に出し続けていくのは厳しいと思います。
そして言わずもがなこれを売上でカバーする事も不可能です。
なぜなら介護ビジネスは制度上、
- サービスを作れない
- 価格を自由に決められない
という縛りがあるからです(食費など細かい自費料金は設定できますが、その影響はごくわずかです)。
仮に他のビジネスであれば、この無料で対応している部分を形にして売ったり、経費がかかるなら基本料金を値上げしたりして帳尻合わせが可能かと思います。
しかし、あくまでも介護は国がお金の取れるサービスとその価格も決めています。
サービスに関してはお金が取れるもの以外のものは、厳しい言い方ですが無駄となり、
価格も決められている事から、事業所の売上の上限も決まってくるという構造になっています。
お節介は百も承知ですが、これから介護ビジネスで起業しようと思っている方や、介護ビジネスへの参入を考えている方などは、ここで解説した事をしっかり理解された上で判断されるのが良いと思います。
儲からないからこそ利益に対してシビアであるべき
ここまで解説させて頂いた辺りが僕が介護ビジネスは儲からないと感じている理由です。
自分自身もそこで働いていますが、介護保険制度自体や介護報酬に対してのもどかしさを感じる瞬間も少なくありません。
根本的な解決にはやはりこれらが良い方向で改正される必要がある為です。
しかし、今までの流れを見ても大幅な改定の望みは薄いです。
つまり、介護ビジネスが急に儲かるようになる事はまずないと考えて良いでしょう。
ならばこそ、利益に対してはどのビジネスよりもシビアに向き合うべきだと考えています。
なぜなら、そうしないとすぐに赤字になってしまい、倒産や休業に追い込まれてしまうからです。
利益を追求する事は利用者や家族、さらには職員の雇用を守る事に繋がります。
制度のルールを順守しつつ、日頃の「売上を上げる為の営業活動」や「コスト削減の取り組み」
さらには“介護”という利用者の命を預かる仕事が故の「運営上のリスク管理」なども必要となってくる介護ビジネス。
かなりの覚悟がないと始められませんね…
介護ビジネスのメリット
「介護ビジネスは儲からない」や「覚悟がないと始められない」などと言っていますが、
もちろん、メリットもあると考えています。
個人的には“ビジネスの手引き”があるという事はメリットだと捉えています。
- 立ち上げ方(指定申請の方法)
- サービス提供のルール
- サービスの価格
- 主要の営業先
などが決められている事が儲からない理由でもあり、メリットでもあります。
やる事が決められているのですから、その中で最適化を図れば良いだけです。
全てをゼロから作らなければならない新規ビジネスを立ち上げるよりも低リスクと言えると思います。
先程の通り利益に対してシビアに運営していけば儲かりはしなくても、大きな失敗はしにくいのかなと考えています。
イメージで言えば、国が用意したフランチャイズみたいな感じでしょうか。
また、介護ビジネス自体には制限があるかも知れませんが、
別の収益源としてそこで得たノウハウなどをYouTubeで発信するなんてやり方も無くはないと思います。
介護ビジネスを運営しているからこそ出来る事。といった観点で考えても良いかも知れませんね。
この辺りについては僕自身も引き続き考察していきたいと考えています。
という事で今回は、実際にそこに身を置く者から見た「介護ビジネスが儲からない理由」について解説しました。
もし分からない事があれば下記のコメント欄からお問い合わせいただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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