1.「介護事業所の倒産が過去最多!現状は」
2020年における東京商工リサーチによると、老人福祉・介護事業者の「倒産ケース」と「廃業及び解散のケース」の件数について明らかにしました。
その調査によると、2020年における介護事業所の倒産件数は112件となっており、この倒産件数は前年比で0.9%も上回っている状況となり、倒産件数だけをみると過去最多を記録しています。
そして2020年1月から10月までの調査で「休廃業・解散」を行った介護事業者は406件となり、前年の395件を大幅に上回っている算出となっています。
このような倒産をしてしまった事業者の負債に注目をすると8割が負債額1億円未満の事業者が多くを占めており、介護職における中小規模の事業者は厳しい経済状況を強いられています。
2.「介護施設の倒産はどのような影響をもたらすのか?」
介護施設の倒産となると、すでに入居をしている利用者にとっては大きな負担を負わせることになります。
介護施設が倒産をして民事再生法によって新しい運営者が見つかれば入居者は他の介護施設に移転をすることなく入居が可能となりますが、現在の介護業界というのは、先ほど紹介した倒産件数を見ていただければ分かる通り、多くの介護施設での経営状況は良くありません。
そのために新しい運営者を見つけることができずに、廃業という形で、利用者が他の施設に移るということが通例となっている現状があります。
そのため住み慣れた環境を突然離れなくてはならなくなりますし、これまで築いてきた利用者同士の交流関係や、スタッフとの信頼関係もリセットされてしまうという影響があるのです。
3.「介護施設の倒産が相次ぐ理由とは?」
介護職というのは従来から人手不足が深刻化しており、現在の介護現場に着目してみると、少子高齢化で増加する高齢者に対して、十分対応できるだけの人材の確保ができていないという点が挙げられます。
2019年の調査では日本の総人口が1億2617万人のうち、65歳以上の人口は3.589万人となり、高齢率は28.4%にまで達している現状を鑑みると、介護施設の経営状況は向上すると思われますが、介護に従事する人材の確保が出来ていないために、倒産を余儀なくされるケースが非常に多いということが現状となります。
このような人材の確保に関して「人材を補填すれば良いのではないか?」といった意見もありますが、採用が困難な理由として、約6割の事業者が「他業他社との人材獲得競争が厳しい」という回答をしており、これは社会的に介護職員の待遇が良くないことで介護職員の人材が減り、採用の募集を出したとしても人材の確保が難しいという理由が挙げられます。
このような介護職員の待遇の悪さについては過去から問題視されており、これから少子高齢化が進む世の中で、介護職員の待遇についての検討をしっかりと行わなければ、介護施設の倒産の連鎖は続いていくと思われます。
4.「2020年新型コロナウイルスの影響による倒産」
これまで、介護施設の倒産について人材確保の困難による廃業について解説していきましたが、2020年に流行した新型コロナウイルスの影響により、倒産を余儀なくされた介護施設が非常に多い傾向にあります。
NHKが全国の自治体に調査を行った所、介護施設に入居をしている利用者が新型コロナウイルスに感染したケースは2020年4月までに550人の感染が確認され、この内の約60人の施設利用者が新型コロナウイルスの影響によって死亡しました。
このようなコロナウイルスの感染拡大を防止するために、厚生労働省は2020年4月24日に、デイサービスを中心とした全国の介護施設858カ所の介護事業者が休業したことを発表しました。
特に新型コロナウイルスの影響は高齢者にとっては重篤な症状になる可能性が高いウイルスですので、休業を行った事業所の98%が感染防止を理由として休業を行いました。
このように新型のウイルスによって休業や廃業を決意した事業所も目立つようになり、このような結果を踏まえて政府としては、介護現場への補助金の追加支給が検討されるようになり、2020年11月には第3次補正予算案に盛り込み、2020年12月8日には第3次補正予算案において閣議決定されました。
介護事業所の倒産が相次ぐ中で、これから少子高齢化が進むという現状を鑑みても、早急に対策を講じなければならないのは明白と言えます。
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